2016.01.07

  • 医院経営

誰も言えない「お局歯科衛生士のSCが下手!」に、外部のメスを【歯科あるある第4回】

歯科衛生士の基本業務の一つであるSC(スケーリング)。先生たちの中にも、「SCは歯科衛生士にお任せ」という人は多いのではないでしょうか?  実際、普段SCをしていない歯科医師よりも、毎日SCばかりしている歯科衛生士の方がSC技術は上ということはよくあります。ですが、歯科衛生士だからと言って全員がSCが上手かと言えばそんなこともありません。特に経験年数が長い=「SCが上手い」とは簡単にはいきません(歯科医師でも経験年数が長い=技術が高いとは限りませんよね)。
そんな時、もし自分よりも経験の長いベテラン衛生士のSC技術に問題があったら……。どのように解決するのがスマートでしょうか。

歯科衛生士はみんなSC上手い

歯科衛生士と言えばSC!うちの院長もそう思っている歯科医師の一人です。「SCは衛生士さんの方が上手いから」と言って、自分では絶対にSCはしません。また、衛生士はみんなSCはできるもの、自分よりうまいと本気で思っているのか、衛生士のSC後のチェックなども一切しません。でも、歯科医師だって若くてうまい先生もいれば、いまいちなベテラン先生もいる。それと同じように、いくら長く衛生士をやっていても、SCが下手な衛生士だっているのです。

勤続10年。影の権力者、歯科衛生のAさん

私の勤める医院には、お局パート歯科衛生士のAさんがいます。Aさんはパートですが医院に10年以上勤務している40代のベテラン歯科衛生士。私は常勤の主任衛生士ですが、実際、Aさんの方が院内での権力を持っていて、特にスタッフ(歯科衛生士、歯科助手)は誰もAさんには逆らえません。悪い人というわけではないのですが、優しい先輩というタイプでもなく、みんなちょくちょく業務のことで注意を受けたりしているので新人たちからは怖がられています。
そんなAさんですが、TEK(仮歯)や診療補助はスピードもありセンスが良いのですが、どうもSCがお世辞にも上手とは言えません。ですが、そんなAさんのSC技術について誰も指摘できるはずもなく、私たち中堅衛生士たちも目をつぶっていました。

みんな疑問に思っていた? AさんのSC技術

この医院は歯科医院では珍しく「予約の要らない歯科医院」です。予約制でないため、歯科衛生士も患者担当制ではありません。そのため、SCの前半半分と、後半半分を違う衛生士が担当することもあります。
そんな中でAさんが前回担当した患者さんのSCをしていると患者さんから「前回は痛かった」というお話を聞くことがありました。またAさんがSCをしたはずの箇所を見ると、歯間に歯石の取り残しがあったり、SC後の研磨が荒く歯面が荒れていました。こんなことが何度かあり、私はAさんのSC技術に疑問を持っていました。ですが、もちろん本人に言うことはできず……。
このことを信頼できる同期に相談してみました。すると、同期も同じようにAさんのSCには疑問があったというではありませんか。これはなんとかしたほうがいいという話になり、2人で良い案はないか考えました。

SC技術力の問題に気がついてもらうための秘策を検討

院長は歯科衛生士のSCに関してはノータッチ。また、院長もAさんにはどちらかというと注意しにくい雰囲気を感じていたため、院長にどうにかしてもらうということは考えませんでした。ですが、私たちがAさんに直接言うなんてもっと無理!
ということで思いついたのが「外部講師」です。「新卒のSC指導」という名目で外部講師を呼び、院内研修を行ってはどうかと考えました。そうすれば私たちからではなく、外部講師の先生からAさんに指摘してもらえる、もしくはAさん自身が自分のSC技術不足に気がつくかもしれないと考えたのです。しかも私たちも勉強になって一石二鳥というわけです。
院長にそのことを相談してみるとすぐにOKが出ました。外部講師は、院長が長く付き合っている歯科資材メーカーのつてで、有名な先生に来てもらえることになりました。
院長も、自分はSCやSRPは得意ではないので教えることができないから、院内で積極的に研修を行うのは良いことだと言ってくださり、費用も負担してくださいました。理解のある院長で本当に良かったと思います。

外部講師を招き、院内研修を実施

翌月、診療時間を変更して(これも院長に感謝です!)、歯科衛生士、歯科医師全員参加で外部講師を招いた院内研修が実施されました。SCだけでなく超音波スケーラーを使ったSRPの講習も同時に行ってもらうことができたので、私たち中堅衛生士にも非常にいい勉強になりました。SC、SRPと、歯科助手さんと先生たちが患者役となり、衛生士全員が個別にチェック、指導をしてもらう時間も設けました。その中で、AさんのSCについても指導をしてもらえたようです。Aさんはやや不満そうでしたが、セミナーでも有名な先生からの指導だったので聞き入れているようでした。

本人の問題解決&院内全体の技術向上の一石二鳥

院内研修は大成功。新卒スタッフは丁寧にSC、SRPの指導をしてもらえ、アドバイスももらったようで、モチベーションが上がっているように感じます。私たち中堅スタッフも有名な先生に指導してもらえ、これからの診療に生かせるようなテクニックも学ぶことができました。Aさんはと言うと、基本のSC方法を注意され、外部講師のことはあまり良く思っていないようでしたが、自分のSCについて見直すきっかけになったようで、AさんがSCした後を見ると、以前よりも丁寧にSCされているように思います。

院内の人間関係を保つために外部の力を借りる

このように、院内の狭い人間関係では伝えずらいことも、外部の一度きりしか会うことのないような人にお願いし伝えてもらうことで、院内の人間関係に一切傷を付けずに問題解決をすることができました。それもこれもですが費用のかかる外部講師を招いた研修や、診療時間を削って研修時間を作ってくれた院長には本当に感謝しています。

歯科衛生士 ERI 女性・28歳

お酒が大好き! 飲み会大好き! 独身時代は週に5日は飲みに行っていた。が、現在は結婚し、飲み会は週1回に自粛中。新卒から努めている医院で現在は主任衛生士を務めている。子供ができたら仕事はやめる予定。現在は結婚式の準備で大忙し。

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