2015.12.29

  • 医院経営

「同僚を振り回すある歯科衛生士の突然の休み」問題をスマホで解決【歯科あるある第3回】

歯科医院は女性の職場。それなのに子供が生まれると、ほとんどの人は仕事を辞めてしまいます。少人数で診療を行う歯科医院では「子供がいるからと夕方には帰りたい」「突然の子供の急病でお休みしたい」「土日は学校が休みなので出勤できない」となると、どうしても残りのスタッフだけでは対応できないため、小さい子供のいる女性の勤務は難しいというのが現状なのでしょう。ですが、子供がいる女性でも働きやすい環境づくりをすることが、歯科医院の慢性的な人手不足、歯科衛生士不足を解消するキーポイントになるのではないでしょうか。

少人数チームで診療を行う訪問歯科では1人の休みは致命的

私が勤めるのは訪問歯科専門のクリニックです。歯科医師1名、歯科衛生士2名、歯科助手1名のチームで、老人ホームを中心に訪問をしています。1日の患者数はチームによりますが30~40名程。
訪問歯科では、患者さまの口腔ケアが非常に重要な業務の一つです。基本的には、歯科衛生士が口腔ケアを行った後に歯科医師が簡単にチェック、問題がある個所や、入れ歯のトラブルなどがあれば対応するという流れです。少人数のチームなので1人休むだけでも致命的。他のチームも少人数で診療をしているため、余っているスタッフはいません。

朝一の「お休み連絡」は業務に混乱をもたらす

そんな訪問歯科ですが、私の勤める医院は診療時間が8:30~17:30と夕方早目に終わるということもあり、子持ちの歯科衛生士も数名在籍しています。みんな、残業は絶対にできない、土日祝日は休みたいなどの要望があるため、ほとんどは非常勤のシフト勤務なのですが、一人だけ常勤で働く子持ち歯科衛生士がいます。子供は2歳と5歳。保育園に預けて働いているのですが、季節の変わり目、寒い時期には1週間休みっぱなしになることも…。休みの理由は子供の急な発熱や、インフルエンザにノロウイルス感染…確かにどうしようもない理由です。
しかし、朝、事務スタッフが勤務してくる8:15に合わせていつも休みの電話が入ります。そこから事務スタッフが非番のスタッフに電話を掛けまくり、代わりにシフトインできる人を探すのですが…そんなに急に代わりの人が見つかるわけもなく、結局、その人のチームは歯科衛生士が一人足りないまま診療が始まってしまいます。そのしわ寄せが来るのはもう一人の歯科衛生士。一緒にチームを組んでいる歯科衛生士は20代の独身。彼女はほぼ休むことなく勤務しているのでかなり不満に思っている様子です。
確かに同じ給料で働いているのに、いつもその人のいない分をフォローさせられ、結局診療が長引いて残業。それは不満に思っても仕方ありません。基本的に同じチームで毎日訪問に向かうのですが、だんだんと二人の関係も悪くなってきてしまい、移動中の車の中でもピリピリした空気が漂うようになって…。

同じ人にばかり、しわ寄せが来ないようなチーム編成に

院長は現場のことにはノータッチのため、この問題は自分たちで解決するしかありません。事務長と常勤衛生士が中心となって、なんとかこの問題を解決する対策を考え始めました。ひとまず、くだんの歯科衛生士二人の関係がかなり悪化してきたこともあり、チーム編成を変更することにしました。歯科医師と常勤歯科衛生士1名、歯科助手1名を固定とし、もう一人の歯科衛生士は非常勤スタッフを曜日毎に入れ替えることにしました。その非常勤スタッフの枠に、休みがちな常勤の歯科衛生士も組み込み、彼女が休んだ際に、同じ人にばかり負担がかからないようにしたのです。

スマホアプリで突然の休みに対応できるシステムを構築

チーム編成と同時に、急な休みの場合にスタッフ全員に素早く連絡ができるようなシステムを導入しました。具体的には、スマホアプリの「LINE(ライン)」で全員と連絡が取れるようにし、子供の具合が悪い場合や、自分の体調不良で次の日に休んでしまいそうな場合は、事前に全員にその情報を共有。代わりにシフトインできる人がいれば、事前にシフトを交代してもらえるようにしました。これは便利で、医院がやっていない時間でも連絡が取れるため、前の日の晩から子供が熱を出して“危なそう”などという場合にも、夜のうちに連絡をやりとりすることができるため、代わりにシフトインできる人が見つけられるようになりました。
ついでに、シフト管理アプリ(正確にはカレンダー共有アプリ)「TimeTree(タイムツリー)」を使い、全体のシフトを登録し、アプリ内で全員のシフトを誰でも確かめられるようにしました。今までは紙のシフト表を配っていましたが、アプリにすることで、変更があった場合にもすぐに全員に伝えることができるので役立っています。

TimeTree

TimeTree

他のスタッフも有効利用できていて効果は絶大

このシステムは他のスタッフにも都合よく利用ができているようです。非常勤スタッフ同士も、シフトを交換してもらいたいときや、同じく子供の病気などで休みたい場合にすぐに全員と連絡がとれることから(今まではメールや電話で個別に連絡をしあっていたようです)、今までよりも気軽に連絡ができるようになったようで、役立っているようです。
本当は、急なお休みというのはよくありませんが、小さい子供がいる場合どうしても急病などでお休みをせざるを得ないことがあります。そんな時に、院内全体でフォローできる体制を作ることは、子育て中のスタッフだけでなく、他のスタッフも働きやすい職場環境を作る上で重要なことだということがわかりました。

歯科衛生士 スヌーピー 女性・40歳

趣味はサーフィン。休みは10歳年上の夫と、夫婦で海に行っている。子供はいないため、自由に仕事と趣味を楽しんでいる。結婚直後に一度専業主婦になったが、数年で自分に家事は向いていないということに気づく。現在は訪問歯科で勤務中。

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